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世界一の馬


世界でいちばん速く、美しいと評判の王様の馬が街にやってきました。
 「なんて立派な馬だ」

街の人々は、口々に誉めたたえました。
 「あのしなやかで強い足は、まるではがねだ。地の果てまでも走るだろうよ」

これを聞いた馬の足は、得意そうに足を踏みならして言いました。

”おれは世界一の足だぞ!!”

 「それに、あのたくましい体を見ろ。引き締まった筋肉といい、雪より白い
 素晴しい毛並みといい、申し分なしだ」
これを聞いた胴も、体をゆすって言ったものです。

”おれだって世界一だぞ!!”

なおも街の人々は誉めたたえます。
 「輝くばかりの金色のたてがみは、百獣の王ライオンにだって負けないぞ。
  風のように軽やかで、エレガントなしっぽはどうだ!!」
たてがみも、しっぽも、もう多威張りです。

 「澄みわたった瞳、通った鼻すじ、まこと世界一の名馬の気品だぞ」
馬の頭も、これ以上ないという得意さを満面に浮かべて、大空に向かって高く高くいなないたのです。

    でもこの時、そんな人々の賞賛の声をよそに、ひとり黙々と
    自分の役目を果たしている”縁の下の力持ち”がいたのです。

    それは、蹄鉄です。
    大地の上で力強く、
”世界一の名馬”を支えていました。

テーマ「縁の下の力持ち」なのですが・・・
正直なところ、よくできた話で、支えているのは、本来はヒズメでしょ、と言われるとミもフタもないのです。
蹄鉄は馬に付属しているモノで、馬、本体とは無関係。
わたしは皮肉屋で、どこかオカシナトコロハナイカ、と探してしまうので、「そうね、蹄鉄さんはエライわね」と、素直に受け取れないカワリモノでございます。
まあ、それはトモカクとして。世の中には、人の目に触れないで、モクモクと「自分の仕事」をしている人がおります。
こういう蹄鉄さんというモノは、平和な時には、居るか居ないか分からない存在。
しかし、いったん「いざ、鎌倉」となった時は、光り輝くものと思います。

 

風邪をひいた鷲


ある寒い日のことです。
寒い北風の中では、鳥の王様鷲も病気には勝てません。
とうとう風邪をひいてしまったのです。
すっかり弱った鷲は、ぴゅうぴゅうと吹きつける北風に向かって言いました。

「北風くん、どうかあまり冷たく吹つけないでくれないか。もう風邪がひどくて大変なんだ」

「ぼくのせいじゃないよ。あの山の頂きの万年雪の奴が、ぼくを冷たく冷たくしているんだよ」

北風のことばを聞いた鷲は、万年雪に頼むことにしました。
「雪さん、あまり北風くんを冷やさないでくれないか。風邪が治らなくて困っているんだ」

それを聞いて万年雪が言いました。
「それは太陽のせいさ。どんどん照らしてくれれば、ぼくなんか直ぐに溶けてしまうのさ」

そこで鷲は、太陽のところへ行きました。
「ぼくのせいではないさ。あの厚い雲めがぼくの光を邪魔しているのさ」

ぜいぜいと肩で息をしながら、鷲は雲のところへ行ったものです。
「ぼくは知らないよ。北風の奴がぼくを吹き飛ばしてくれればいいんだよ」

もう鷲は苦しくて、うんうん唸りながらつぶやきました。
「一体、北風は吹いた方がいいのかな、吹かない方がいいのかな・・・」


テーマ「自分の所為じゃない」ですがね・・・
「自分は正しい」とすると、誰かが「間違っている」というコトなのでしょうか・・・。
同じようなモノに「卵が先か、ニワトリが先か」というものもあります。
グルグルグルで、、う〜〜ん・・・ホントに難しいですよね。
一緒になって、う〜〜んとされてもコマルので、先に進みます。

「自分のせいじゃないよ」とやっていて、その場では自分は責任逃れが・・・できるかも知れない。けどね。モトモトの問題が、ちっとも解決しないで、やがては、自分にも困った問題が降りかかることも、あるんですよね。
現実の場では。

 

腹ぺこの熊


    それは毎年のことなのです・・・・。まず、おなかの虫が「グー」と大あくび。

この虫が一度目をさましたら、もう大変、グーグーゴロゴロとおなかの中で大暴れです。
「腹減ったあ、腹減ったあ」と、
くっつきそうなおなかの皮や背中の皮を引っ張ったり、けとばしたりの八つ当たりなのです。

  体中の力なんて、みんなおなかに吸い込まれて行って、もうふらふら。
  目の前には赤や青の星が火花を散らしてぐるぐる回って、もうくらくら。

「ああ、こってりと油ののった鮭が食いたいなあ。あまーいハチミツ、どんなにうまいだろう。
 真っ赤に熟した野いちごの実、溶けるように柔らかい木の芽、たっぷり太った甲虫も、みんなみんな食いたいよう・・・」
でも耳をすますと、外ではこの冬の総決算のような凄い吹雪が、ぴゅうぴゅうと吹き荒れる音が聞こえてきます。

もう少し、もう少しの辛抱、もうそこまで来ている春を信じて、この辛い苦しみに耐えるより他に方法はないのです。
それは毎年のことなのですが・・・・。

「あーあ、秋にもうちょっと冬ごもりの準備をしておけばよかったんだ。まだ早い、大丈夫と油断しているうちに、冬はあっという間に来てしまうんだ。もうこんな辛い思いはこりごり、今年からはもっと早く、じっくり冬支度をしよう」

悲しいことに、熊くんのこの固い決心もまた、毎年のことなのです。
やがて、春が来て、夏が来て、秋が来る頃には、毎年それなりの理由ができて、ついつい同じような冬を迎えてしまうのです。

    今年こそ、熊くんが充分な冬支度ができるよう祈らずにはいられません。


テーマ「後回し」なのです・・・
どうなんでしょう。
わたしも「後回し」にするコトありますね。夏休みの宿題。毎日、予定をたてて、出来ることをすこしづつ、やっておけば。。。。それなのに。
食卓に、美味しいものと、それなりのもの。。。。
特別に好きなものは、後にとっておいて、ゆっくり楽しみながら食べたいタイプです。
わたし。
たぶん、そういうのとは違いますよね。


ひっくりかえった亀



ぽかぽか陽気の春です。河原の石の上で日なたぼっこをしていた亀は思わず浮かれて、
足をすべらして仰向けにひっくりかえってしまったのです。
悪いことに石と石の凹みに落ちたもので身動きができません。

「おーい、だれか助けてくれ!!」亀は必死で叫びました。

そこにあひると、がちょうが通りかかりました。

「おや、亀くんが大変だ、助けてあげよう。あの右側の石を少しずらしてやれば
亀くんも簡単に起き上がることができるだろう」
あひるが言うと、がちょうが言い返しました。

「いや、左側の石の方が小さくて動かしやすいよガァ」

「そう言うけどあの左側の石は半分砂に埋まっているから、見かけより
ずっと大きいに違いない。やっぱり右側の石を動かそう」
あひるも負けずに言い返しました。

「僕はそんなに埋まっていないと思うよ。それにあの右側の石を動かすためには、
すぐ後ろの石を動かさねばならないし、後ろの石を動かすためには、またその
後ろの石をずらさなければならない。大変な労力だよガァガァー」
がちょうが興奮ぎみに言うと、あひるもむきになって言いました。

「しかしがちょうさん、仮に左側の石が余り砂に埋まってないとしても、
まわりの足場が悪すぎるんじゃないかな」

「それは右の石にも言えると思うよガァ」
論争は一向に終わりそうもありません。

こうしている間にも亀は必死です。
もがきにもがいているうちに甲羅がずれて、 くるっと元に戻りました。

「やれやれ、理屈屋にはかなわない。ちょっと手を貸してくれればよいのに」
プリプリしながら亀は行ってしまいました。

永い春の陽もようやく西に傾いて、まだまだ論争がつづく二人の長い影を作っています。

テーマ「言うだけで、動かず」とでも言いましょうか、です・・・
そうなんですねぇ。ちょっと、手を貸してくれるだけで、なんの問題もなく、納まる。
というようなことなのです。
「動いてくれないならいいわよ、自分でやります」みたいな感じ・・・自分で動けるなら、動いたらいいじゃない。と言われそうな視線をヒシヒシと感じます。

「お願〜い(はぁと)あなたの、手を借りたいのよ」と言ってしまったら、もしかしたら、簡単?でも、お願いするのって、ちょっと難しい時もあるのよね。そこで、強制的に動かす方法を、アレコレと考えるのです。

本題に戻ると。。歯が痛い・・・痛いのなら、歯医者へ行く。これは、当然至極です。
「どうして痛くなるのか」を、延々と考えていても、痛みは治まりません。
ところが、心の不思議。。。行きたくないから悩むのですね。
悩んでいたら、どうにかなる。先延ばし、先延ばし〜〜



つづく・・・かもしれない

 

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